初恋マニュアル



「あ、うん……でも、自分だったらやだろうなって思っただけだから」



気にしないでって意味もこめてそう言うと、由宇ちゃんがこっそり本音を話してくれる。



「そっか……うん……まだね?よくわかんないんだ。だからひやかされちゃうと、自分のほんとの気持ちがよけいにわかんなくなりそうで……」



その気持ちはすごくよくわかる。


だから私もついウンウンといきおいよくうなずいた。



「……もしかして、美羽ちゃんもいるの?その……そういう人」



急な返しにドキリとした。


なんて答えていいのかわからずに、あいまいにほほえむと、由宇ちゃんはそれを肯定ととったのか、うれしそうに笑う。



「そっか……」



でもそれ以上は聞いてくることなく、自分の中だけで処理してくれているみたいだった。


たぶん、いろいろ聞かれることの居心地の悪さを、由宇ちゃん自身が知ってるからなんだろう。


なんとなく親近感みたいなものを覚えながら、私と由宇ちゃんは顔を見合わせてお互い照れたように笑った。


ふとヨーヨー釣りの方を見ると、さっきまでいたはずの愛里たちの姿が見えない。
< 142 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop