初恋マニュアル
そんな私たちの様子なんか目に入らないのか、五十嵐くんはいまだうしろを振り返ることができない由宇ちゃんの背中に向かって声をかけてる。


それどころか、一歩、また一歩とどんどんこっちに近づいてきた。



――ど、ど、ど、どうしよう!



私の手をにぎる由宇ちゃんの手に力がこもる。チラリと由宇ちゃんの方を見ると、真っ赤になってうつむいてるのが見えた。



「す、すいません!」



気づいたらそうさけんでた。


由宇ちゃんの気持ちを察して、私がなんとかしなくちゃって思ったから。


五十嵐くんはようやく私の存在に気づいたようで、不思議そうにこちらに顔を向ける。



――ひえぇ……声をかけたはいいけど、このあとどうしよう?愛里や夏帆ちゃんがいれば、もっとうまくやってくれたにちがいないのに……



コクンとツバをのみこみ、次の言葉を必死に探す。


そうこうしているうちに、五十嵐くんの方から、声がかけられた。



「え……と、だれ?」



――そうですよね!私もさっきまであなたのこと、知りませんでした!


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