初恋マニュアル
「まあ、とにかくあとでお礼しておいで?」
その言葉に、私はその場で固まる。
愛里も一緒に行ってくれるんだとばかり思ってたから。
そんな私の気持ちに気づいたのか、愛里があきれたように笑った。
「もしかして、一緒に行ってほしいとか思ってる?」
「だって、私……一人じゃ……」
情けない声を出す私に、愛里はわざと大きなため息をついてみせる。
「こないだも言ったけど、美羽は私にたよりすぎ。まぁ、いきなり一人で男子に声かけるのは、ちょっとハードル高いか……。わかった、じゃあ一緒に行ってもいいけど、美羽が自分で声かけるんだよ?」
中学のころなら、こういう場面では必ず愛里が一緒にいてくれて、男子にも私の代わりに言いたいことを伝えてくれていた。
例えば、日直が一緒の男子に伝えなきゃいけないことがあったとき、先生から男子に伝言をたのまれたとき――
だから高校生になって、急にこんな風に突き放されるなんて思ってもみなかった。
部活のことだってそうだ。
私が苦手なの知ってて、わざと運動部に入ったとしか思えない。
たしかに甘えてる部分はたくさんある。
だから、自分でもしっかりしなくちゃって思ってはいるけど……。