初恋マニュアル



「まあ、とにかくあとでお礼しておいで?」



その言葉に、私はその場で固まる。


愛里も一緒に行ってくれるんだとばかり思ってたから。


そんな私の気持ちに気づいたのか、愛里があきれたように笑った。



「もしかして、一緒に行ってほしいとか思ってる?」



「だって、私……一人じゃ……」



情けない声を出す私に、愛里はわざと大きなため息をついてみせる。



「こないだも言ったけど、美羽は私にたよりすぎ。まぁ、いきなり一人で男子に声かけるのは、ちょっとハードル高いか……。わかった、じゃあ一緒に行ってもいいけど、美羽が自分で声かけるんだよ?」



中学のころなら、こういう場面では必ず愛里が一緒にいてくれて、男子にも私の代わりに言いたいことを伝えてくれていた。


例えば、日直が一緒の男子に伝えなきゃいけないことがあったとき、先生から男子に伝言をたのまれたとき――


だから高校生になって、急にこんな風に突き放されるなんて思ってもみなかった。


部活のことだってそうだ。


私が苦手なの知ってて、わざと運動部に入ったとしか思えない。


たしかに甘えてる部分はたくさんある。


だから、自分でもしっかりしなくちゃって思ってはいるけど……。
< 15 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop