初恋マニュアル
きっとなにか考えがあって、私に待っててって言ったんだってことはわかってる。


でも一人ぼっちでこんな場所に置いてきぼりにされて不安はぬぐえなかった。


下駄の上に置いたままの足は、たしかに親指と人差し指の間が赤くなっていて、水ぶくれが出来そうなところもある。


その部分を三浦くんが触れたんだと思ったら、はずかしさで痛みなんかどっかへいってしまいそうだ。


生温かい風がふいていやな空気が流れた気がした。


ちょっぴり怖くなって、ベンチから腰を浮かそうとしたとき、ふと目の前に人の気配がした。


三浦くんがもどってきたのかと、あわてて顔をあげると、見たことのない顔が二つあってビクッとなる。



――だれ?



浮かしかけた腰が、へなへなとまたベンチにおろされる。


逃げなきゃって思うのに足に力が入らない。


心臓の音がどんどん速くなって、手がふるえた。



――こわい!



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