初恋マニュアル



「あれぇ?こんなとこで1人でどうしたの?」



歳は同じか、少し上だろうか?


二人とも甚平にピアス、短めの髪を明るく染めてワックスかなにかでたたせているようだった。



「1人なら俺たちと一緒に遊ばない?」



優しい声色とはうらはらに、グイッと強くうでを引っ張られてパニックになった。


一人じゃないって言いたいのに声が出ない。


恐怖で体がすくんで逃げることも、助けを呼ぶこともできない。



「だーいじょうぶ、怖くないって。そんな泣きそうな顔しなくても平気だから、ね?」



もう一人の男が、今度は私の背中に手を回して、クスクス笑いながらそう言った。


両側をはさまれるように囲まれて、一人にはうでをつかまれ、もう一人には背中を抱くように押されて私を無理やり歩かせようとする。


下駄が脱げてることなんかおかまいなしに、グイグイ引っ張る手と、押してくる手。


抵抗しようにも男子二人の力にかなうはずもなく、私は片方裸足の状態で、少しずつ歩かされた。


小石が足の裏にくいこんで、痛みが私をおそう。



「ふるえちゃって、可愛いねぇ」



おびえる私を楽しそうに眺めながら、顔を近づけてくるのは背中を押してる方の男だ。
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