初恋マニュアル
おもわず顔をそむけると、チッと舌打ちをするのが聞こえた。


なんとかふんばって、前に進むのをこばんでみるけど、ズルズルと引きずられていくのを止めることができない。



――やだ!だれか!助けて!



心の中でそう悲痛な声を上げたとき――



「おい!なにしてんだ!」



その声にハッとして顔を上げる。


目の前には三浦くんが立っていた。いつもの三浦くんとはちがう、低くて怒ったような声。



「いやがってるだろ?離せ!」



私のうでをつかんでいた男が、あぁ?とすごみをきかせて三浦くんをにらむ。



――どうしよう!ケンカになっちゃう!



三浦くんがケンカに強いかどうかなんてわからないけど、人数的にこっちのが不利だ。


おまけに私みたいな足手まといがくっついてるわけだから、三浦くんにケガとかさせちゃうかもしれない。


そうおもったときだった。


私の背中を押していた男が、あれ?と首をかしげた。


そのまま私から手を放し、一歩前に出る。
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