初恋マニュアル
「……孝弘?」
瞬時に三浦くんの顔が強張る。
「あ!ほんとだ、なんだよ、孝弘じゃん」
うでをつかんでいた男も私から手を放して三浦くんの方に近づいていく。
――え?知り合い?
意外だった。
こんなガラの悪い人たちと知り合いだなんて……
ポツンと一人残された私には目もくれずに、二人は三浦くんに話しかけてる。
三浦くんはといえば、気まずそうな顔で、それに応えてた。
「なんだ、孝弘のツレだったのかよ。じゃ、仕方ねぇな?」
「そうだな?じゃ、またな?孝弘」
最後はそんなセリフを残して、二人は私にまで手をふりながら、あっさりと立ち去った。
残された私と三浦くんの間に気まずい空気が流れる。
怖かったのと、ホッとしたのとでぼうぜんと立ちつくしていると、三浦くんが遠慮がちに私に近づいてきた。
「ごめん……」
ポツリとそう言ってから、さっきの石のベンチに私を座らせる。