初恋マニュアル
ものすごく歩かされた気がしたけれど、思ったよりベンチから離れてはいなかったみたいだ。


三浦くんはゆっくりしゃがみこむと、また私の足にそっと触れた。



「足の裏……切れちゃってる」



そう言われてはじめて、さっきの小石で切ったんだと気づいた。



「ひゃっ!」



三浦くんはコンビニの袋からペットボトルを取り出すと、ためらうことなくジャバジャバと足の裏にかける。



「あ、ごめんごめん。冷たかったよね?でもバイ菌はいるといけないから、もう少しがまんして?」



下駄の鼻緒でこすれて赤くなったところとは別に、足の裏からも血がにじんで傷がしみた。


痛いのをがまんしながら、されるがままになっていると、水で洗ってくれた足を持ったまま三浦くんは下を向いてつぶやいた。



「一人にしちゃってごめん……怖かったよね?」



まるで自分のせいだと言ってるみたいに、私の足を持ちながらうつむく三浦くん。
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