初恋マニュアル
久しぶりの満員電車に揺られながら、あの日のことを思い出す。


愛里と仲直りしたこと。


夏帆ちゃんと由宇ちゃんていう新しい友達ができたこと。


可愛い浴衣を四人で選んだり、夏祭りにみんなで出かけて楽しかったこと。


それから、三浦くんと二人で見た花火。


認めてしまった自分の気持ち。


そこまで思い出して目の前の愛里を見上げる。


四角い箱に押し込まれた私たちは、つかまることも出来ずにドアに押し付けられてる状態だ。



「学校はいいけど、朝のラッシュはやっぱきついね?」



小声でそう言いながらも、愛里は小さな私をかばうように踏ん張ってくれてる。



「うん……愛里、大丈夫?」



「大丈夫、大丈夫」



まるで彼氏みたいな愛里は、高校に入って自立しろって私を突き放したけれど、やっぱりこういうときは私のことを気づかってくれる。


そんな愛里に三浦くんへの気持ちを内緒にしているのは、なんとなく心苦しかった。


だけど、初めての大切なこの気持ちは、だれにも触れてほしくないっていうのが、本音だった。


そっとしといてほしいって気持ちの方が強い。
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