初恋マニュアル
「え……と?なんのありがとう?」
彼の不思議そうな声が頭の上から降ってきて、私は顔が一気に熱くなるのを感じながら、あわてて彼の顔をもう一度見た。
「……あ……えっと……」
お礼を言って終わりだと思ってたのに、ありがとうの意味を聞かれて完全にテンパってしまう。
横にいた愛里に助けを求めて必死に目でうったえたけど、全然助けてくれそうにない。
涙目になっておろおろしながらその場に立ちつくしていると、三浦くんがなにかを思い出したように口を開いた。
「あっ!もしかして、……丸山?」
「へっ?」
急に名前を呼ばれて、私は間抜けな声を出してしまった。
「え……と、なんで……名前……」
「さっき、先生が呼んでたでしょ?そっかそっか、消しゴムのありがとうね?リョーカイ」
そう言った三浦くんは、気にしないでというように、にっこりと私に笑いかけた。
――やばい……ドキドキする!
きっと今までにないくらい、私の顔は真っ赤だ。