初恋マニュアル
私と愛里たちを交互に見比べながら、彼は満面の笑みでそう聞いてくる。


なんて答えていいかわからずに口ごもっていると、夏帆ちゃんが代わりに答えてくれた。



「こらこら羽生!変なこと言わないの!おとなしいっていうか、人見知りなんだよね?美羽ちゃんは」



羽生と呼ばれたその男子にそう注意しながら、最後のセリフは私に確認するように笑顔を向けてくる。



「そ、美羽は人見知りなの」



愛里もそれに同調するように言って、うんうんとうなずいた。



「ふうん、そうなんだ。でもさ、たしかになんかテニス部連中とはちがうおしとやかな感じするよね?」



黒の甚平が少し子供っぽく見せているのか、羽生くんはいたずらっ子みたいに目を輝かせて体を乗り出してくる。



「なによ、それ!私たちがおしとやかじゃないとでも?」



わざとにらむように夏帆ちゃんがつめよると、羽生くんは少しひるんだようにうしろに下がった。



「や、なんか学校と雰囲気ちがうからさ……」



もごもごと言い訳めいたことをつぶやく羽生くんに、今度は愛里がにやにやしながらからかう。
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