初恋マニュアル
そう思うとほんと、あの日は最悪だった。


良かったのは三浦くんの浴衣姿が見られたことと、可愛いって言ってもらえたこと。


それから三浦くんとつないだ手。


二人で見た花火。


あとは、変な二人組に絡まれたり、愛里たちにひやかされたり、足が痛かったり、散々だった。


長年の付き合いで、私が不機嫌なのにいち早く気づいた愛里が、さりげなく話題を変えてくれたから良かったけれど。





駅について電車を降りると、押し付けられていた体が一気に解放されてホッとした。


ホームでは同じ制服を着た学生たちが目につく。


みんな一斉に同じ方に向かって歩いていて、私と愛里もそれに続いた。


改札を抜けて階段を降りると、耳がおかしくなりそうなくらいのセミの大合唱と強い日差しが一気に私たちに降り注ぐ。


九月になったとはいえ、まだまだ残暑はきびしく、背中をツーっと汗が流れていった。


額からこめかみに伝う汗を、持っていたタオル地のハンカチでぬぐう。


愛里とちがって日焼けしてない白い肌は、少し赤くなってしまっていた。
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