初恋マニュアル
――だれかいるの?
そう思って息をのむ。
養護の先生かもしれないけれど、カーテンにうつる影がもっと大きいように見えた。
窓から入る光の加減で、ただ影が伸びてるだけかもしれない。
でも養護の先生なら、普通に声とかかけるんじゃない?
シャーって普通にカーテンを開けて、気分はどう?とか言ったりするよね?
ドキドキしながら、その影をジッと見つめてると、それがふいに立ち上がった。
――やっぱり!背も高い!
思わず小さく悲鳴をもらすと、その影の主がしゃべった。
「丸山?目が覚めた?」
聞き覚えのある声。
まさかこれって……
遠慮がちに開けられたカーテンからのぞく顔。
それは、まぎれもなく三浦くん、その人だった。
「あぁ、やっぱりまだちょっと顔色悪いな」
伸ばされた彼の右手が私のほっぺたにそっと触れる。
「大丈夫?」
そう言って三浦くんは私の顔をのぞきこんだ。