初恋マニュアル

「ごめんね？まだ俺、女子は名前と顔が一致してなくてさ……あ、須藤はわかったけど」



私に気をつかったのか、そう言いながらもちらりと私の隣を見る三浦くん。


急に愛里の名前が出てびっくりしたのと同時に、愛里のことは知ってるんだと、少しだけよくわからない感情が私の中に生まれた気がした。



「えー私のこと知ってるの？うれしいな、ありがとう。あ、この子は丸山美羽。ちょっとはずかしがりやなんだけど、仲良くしてあげてね？」



――ちょっと！愛里！なに言ってんの？



自分で声をかけろって言ってたくせに、よけいなことを言う愛里にイラっとした。


だけど心の中ではそうさけんでるのに、あまりのことに声がでない。



「そうなんだ、うん、よろしくね？」



三浦くんはそう私に向って笑顔を見せてくれたけど、本当は愛里と仲良くなりたかったんじゃないかと思うと素直に喜べなかった。


でも、せっかくの好意を無駄にしたくなくて、私も必死に笑顔をつくる。



「あ……よろしく……お願いします」



「ぷっ、同じ歳なのに、なんで敬語？」



クスクス笑いながらそう言われて、ますます言葉が出てこなくなる。