初恋マニュアル
言ってしまってから後悔する。


だって、三浦くんのどんな答えに私は期待してるんだろう。



「ん?あー……だってさ、せっかく中学生になったんだし、楽しんだ方が絶対いいと思って」



三浦くんはそう言いながら、ベッドの横にあった丸いすに、またがるように腰をかけた。


それから足の上で交差させるように両腕を乗せて前かがみになると、寝ている私の目線に合わせるように顔を近づけてくる。


それから首をかしげるような仕草でゆっくりと話しはじめた。



「丸山は、なんか須藤にこだわりすぎて、クラスのだれとも話さなかったろ?」



びぃだまみたいな黒目が、私をとらえたままはなさない。



「消しゴム拾ったときは、ちゃんと俺に話しかけてきてくれたからさ。もしかしたら、怖いだけで、本当はみんなと仲良くなりたいんじゃないかなって思ったから」



高校生になったら、もっとちがう自分になりたいって、ほんとは思ってた。


中学生までずっと引っ込み思案で人見知りだった私が、もっと普通の女の子になれるかもって。


だけど、実際に高校生になってみたら、周りはみんな大人っぽくて、私だけ子供みたいで一歩を踏み出す勇気が出なかった。
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