初恋マニュアル
どうしていいかわからなくてその場に立ちすくんでいると、愛里がすかさず口をはさんだ。



「あ~ごめんね?この子、あんまり男子と話したことなくて、きんちょうしてるんだと思う」



そう言いながら私の頭をくしゃっとなでてくる。


以前なら、愛里が助けてくれたことに感謝していたはずなのに、なぜか今はそんな風に言われたくなかった。


男子と話したことがないとか、きんちょうしてるんだとか、そんなこと三浦くんに知られたくなかったのかもしれない。


自分の感情がコントロールできなくて、早口で三浦くんにもう一度お礼を言う。



「あの!消しゴム、助かったので、ほんとにありがとう!」



それだけを言いきると、ペコリと頭を下げて、そのまま三浦くんの顔も見ずに自分の席へと戻る。



「ちょっと!美羽?あ、三浦くん、ごめんね?またね?」



「あぁ、うん、また」



そんな会話がうしろから聞こえてきて、私の胸はモヤモヤしっぱなしだった。



――なんなんだろう?この気持ち……



今まで愛里に対してこんな気持ちになったことなんかない。


だから自分の気持ちにとまどってしまう。
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