初恋マニュアル
愛里のことは大好きだし、信頼できる大事な親友なのに……


三浦くんなんて、さっき初めてちゃんと顔を見たくらいの浅い浅い関係。


指は……たしかにきれいだなって思ったけど……。


声も……やさしくて耳に心地いい高さだと思ったけど……。


でもそれだけだ。


なのになんでこんなに胸が苦しいんだろう?


私のことは名前と顔も一致しなくて、先生が呼んだことで知ったくらいなのに、愛里のことは知ってた。それがくやしかったのかな?


だけど今までだって、愛里は美人でスタイルも良くて、なんでもできるからいつも目立ってた。


男子には中学のころから人気があったし、女子にだってたよりにされてた。


だから、私を知らなくても愛里を知ってたっておかしくないはずなのに……。



「美羽?どうしたのよ、三浦くんもびっくりするでしょう?」



いつの間にか、席にもどってきていた愛里が、私を注意するようにそう声をかけてくる。


私はいろんなモヤモヤを押しこめて、仕方なくあやまった。



「……ごめん」



愛里はいつものように私を助けてくれただけなのだ。


私がこんな気持ちになってるなんて知らないんだから。
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