初恋マニュアル
普段は冷静な愛里が、今すごく動揺したように聞こえた。



「なら……いいけど。もしそうだったとしても、私は由宇ちゃんみたいに付き合うとか無理だからね？」



納得したフリをして、一応そうくぎをさす。


一瞬の間があって、愛里の口から出た言葉は、私を不快にさせた。


「……ほかに好きな人がいるから？」



どうしても私の口から三浦くんのことを言わせたいのかもしれない。


だってそれじゃあ羽生くんにたのまれたって認めたようなものだ。


もし好きな人がいるっていうなら、羽生くんには断っといてあげるよ？みたいなニュアンスに聞こえる。


いつまでも私が好きだと認めないから、わざと羽生くんのことすすめてるのかもしれないなんて、ねじ曲がった考えが頭をよぎる。



「そういうわけじゃないけど……」



だけどやっぱり、愛里に三浦くんのことが好きだってことは言いたくなかった。


この恋が実る可能性があるならそれでもいいかもしれないけど、三浦くんが私にかまうのは、正義感とかそういうことだと思うから。


またからかったりひやかされたりされて、今の関係さえこわされてしまったらと思うと怖い。
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