初恋マニュアル
プツッとなにも聞こえなくなったスマホをしばらく耳に当てたまま、私はようやく電話を切られたことに気づいた 。


愛里があんなに感情を表に出すのはめずらしい。


最後になんて言った?私が守られて可愛がられてるって?


そんなこと感じたこともないのに、愛里はそんな風に思ってたの?


わけがわからなかった。


愛里はきれいでスタイルもよくて、いつも自信にあふれてた。


チビで童顔で子供みたいで、いつも自信のない私とはちがうって思ってたのに……


なんで私をうらやましいみたいに言うの?


たしかに愛里には中学の頃から守ってもらってたけど。


高校に入ってからは三浦くんにたくさん助けてもらったりもしたけど。


だけど、私にとってはその二人だけしか見当たらない。


みんなにってどういうことだろう?


愛里以外に友達も出来なかった私に、なんでそんなこと言うんだろう?


ベッドに寝転がりながら通話をしていた体を、そのままゆっくりと起こす。


手に持ったままのスマホを見つめながら、私はなにが起こったのかがまだわからないでいた。
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