初恋マニュアル



「ね?行こ?」



おねだりする子犬みたいな態度に断りきれなくて、私は仕方なく小さくうなずいた。


羽生くんが立ち上がったのを合図に、私もイスから立ち上がる。


そのとき、チラッと隣の席を見たけれど、当然のことながら愛里が助けてくれる様子はなかった。


あの日、LINEのことでケンカみたいになってから、私たちは口をきいていない。


当然、次の日の朝から駅に愛里はいなくて、私は行きも帰りも一人になってしまった。


一人しかいない話せる友達がいなくなったことで、教室でも一人ぼっち。


お弁当も一人で食べるのがイヤだから、わざと教室から抜け出して体育館裏の階段でこっそり食べてる。


それでも教室でたくさん人がいる中での一人より、よっぽど気が楽だった。


愛里はというと、これみよがしに他の子と話すわけでもなく、私と同じように一人でいることが多くて、もしかしたら愛里も一人でお弁当を食べているのかもしれない。


早く仲直りしなきゃって気持ちはあるのに、なかなかきっかけがつかめなかった。


だって、愛里が怒ってる原因が私には理解できなかったから。
< 207 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop