初恋マニュアル
「丸山さ、もし良かったら……なんだけど」
私は本当に鈍感だ。
こんな場面になってもまだ、呼び出された意味をよく理解していなかった。
だから、羽生くんの緊張の意味も、いつもとなんとなくちがう様子だった意味にも、まったく気づいてなかったのだ。
愛里にさんざん、羽生くんが私を気に入ってるって話を聞かされてたのに、それは友達としての意味だと思ってたなんて……
「俺と……付き合ってみない?」
――俺と……付き合って……みない?
頭の中で何度もそのフレーズがくりかえされる。
表面上は返事も出来ないまま固まっていたけれど、頭の中は大パニックだ。
――これって告白されたって……こと?
初めての経験に、どうしていいかわからない。
まさか、愛里との話からの流れで、そんなこと言われるなんて思ってもいなかったから。
羽生くんはそんな私を見て、悪い方に考えたのかもしれない。
うろたえたように目を泳がせると、あせりながら言葉を続ける。