初恋マニュアル
うわさ
いい天気だなぁ……
9月も後半になると秋晴れの日は少しひんやりとして気持ちがいい。
空にはうろこ雲が浮かんでいて、ときおり鼻をくすぐるきんもくせいの香りも、秋だなぁとしみじみ思う。
お弁当箱の中に残っていたアスパラベーコンを口に放り込んでフタを閉めると、それをひざの上に乗せたまま、両手を後ろについた。
――あーあ、帰りたいなぁ……
正直、教室に戻るのが苦痛でならない。
それは愛里とケンカしてるからでも、一人ぼっちだからでもなかった。
むしろ、一人にしてほしいって気持ちでいっばいだ。
羽生くんに告られたあの日、握手していたのを他の生徒に見られてたらしく、その日のうちに私と羽生くんのことがうわさになっていた。
羽生くんは必死に否定してくれてたけど、それはそれで申し訳なくて……
夜、わざわざ電話であやまってくれたときも、なんて言葉をかけたらいいのかわからなかった。
せっかく友達になれたと思ったのに……
それが男女だったりするとすぐにうわさになるからイヤになる。