初恋マニュアル
フッとやさしくほほえみながら、話題を変える羽生くん。



「お腹いっぱいだと眠くなりそ」



そう言って目をつぶると両手を後ろにつく。


私はなんて答えたらいいのかわからなくて、だまったまま同じように目をつぶった。


どのくらいそうしてたんだろう?


昼休みの終わりを告げるチャイムがなって、私たちはあわてて立ち上がった。


横に座ってたときとはちがう顔の位置に、少しだけホッとする。



「あのさ」



「え?」



「俺、先いくね?また一緒に教室戻ったら、なに言われるかわかんないし」



その顔が、いっしゅんさみしそうに見えて、私はとまどった。


たしかにさっき自分もそう思ったけど、羽生くんの口から聞くと、すごく申し訳ない気持ちになる。



「……ごめんね?」



思わず出た言葉に、傷ついたような笑みを浮かべる羽生くんを見て、私の言葉が失敗だったんだとわかる。
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