初恋マニュアル
そこには私を見ておどろいたように立ちつくしている愛里の姿があった。



「愛里……あ、あのね?話があるん…」



「なにしに来たの?」



私の言葉をさえぎるようにそう言った愛里は、私から目をそらしてこっちに歩いてくる。


あわてて門から体をはなすと、愛里は私の横をスッと通りすぎてそのまま中に入っていった。



――やっぱり、もう話も聞いてくれないんだ……



愛里の背中はすぐそこにあるのに、すごく遠く感じる。


くじけそうになりながら、カバンからカギを取り出して玄関のドアを開けようとしている愛里を見つめて、家にだれもいないんだと不思議に思った。


愛里のママは専業主婦で、庭の草花を手入れしたり、お菓子を作ったり、いつも家にいるイメージだったから。


ガチャガチャと音がして玄関のドアが開いた。


このままだと家の中に入っちゃう!そう思った時だった。



「入れば?」



ドアを開けたまま、顔もふきげんそうなままなのに、愛里がそう言った。
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