初恋マニュアル
私はコクンとツバをのみこんで、いいの?と聞いてみる。



「いやならいいけど」



冷たく言い放ちながらドアを閉めようとした愛里に、私ははじかれたように玄関の階段をのぼってそれを阻止した。



「いやじゃない!」



玄関のドアをつかんで閉まらないようにしてから、私はそうさけぶ。


愛里はそんな私をしばらくながめていたけれど、そのうちドアから手をはなしてさっさと家の中へと入っていった。


トントントンと階段をのぼっていく愛里と、玄関のドアを閉めてそこに立ったままの私。



――いいんだよね?入っても……



いつもなら愛里のママが出迎えてくれる一階の廊下はシンと静まり返っていた。


温かなイメージの愛里の家が、冷たい空気に包まれてる気がする。


バタンと2階の愛里の部屋のドアが開いた音がして、ハッとした。


私もあわてて靴を脱いで階段をかけ上がる。


そっとドアが開いたままの部屋をのぞくと、愛里はすでにベッドに寄りかかって座りながら、雑誌をパラパラめくっていた。
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