初恋マニュアル
黒板
放課後の教室――
一人、窓際の席に座り、日誌を書く。
窓の外はだんだん薄暗くなっていき、遠くの空には夕焼けが見えた。
今日は日直。
私ともう一人、話したこともない男子だ。
その人が、私に声をかけてきたのは、ホームルームが終わったあとのこと。
「わるぃ、俺、部活あるから、帰りは一人でやってくれる?」
遅刻しそうなのか、あわてた様子で両手を顔の前でおがむようにたのまれて、私はコクンとうなずくことしかできなかった。
慣れてないだけに、言葉がすぐにでてこない。
けれど向こうは特に気にすることなく、ありがと!よろしく!と言って走り去っていった。
一人でやるのは大変だけど、男子と二人きりっていうのも気まずい。
だったら一人のが気が楽だと思った私を見透かすように、愛里がほっぺたをふくらませて文句を言う。
「こういうのがチャンスなのに、ダメじゃん!」
「でもほら、部活みたいだし、忙しそうだったから。私は帰宅部だし、ヒマだからさ」
そう言ってみても、愛里はふくれたままだ。
「だいたい、女子一人にやらせるとか!ありえないんだけど!美羽は甘い!」