初恋マニュアル
なんて声をかけていいかわからなかった。


知ってたら、さっきみたいなひどいこと言わずにすんだのに、出してしまった言葉はもうもとには戻せない。



「……好きな人が出来たって、ゆうくん……言ったの……」



ポツポツと話し出す愛里の言葉にショックを受けながら、私はだまってそれを聞いていた。



「どんな人?って聞いたら……同じ大学の人らしくて……サークルも一緒だって……」



愛里の話す声がふるえてる。



「会いに行ったの……その人に……」



「え?」



「ていっても、遠くから見ただけなんだけど」



プライドの高い愛里がそこまでするなんて、よっぽどのことだ。


夏祭りの日、どことなくゆうくんの話にそっけない気がしたのは、こういうことだったのかと悲しくなった。



「そしたらね?どことなくだけど……美羽に似てたんだ、その人。小さくてたよりなげで……だけど見た目はそうかもしれないけど、ゆうくんと同じ歳じゃん!私のが年下なのに、おかしいよ……ヒック……たよりたいのは……ウウッ…グス……あたしの方なのに」



愛里は泣いていた。






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