初恋マニュアル
やっとおさまったと思ったのに、愛里の目からはまた涙がこぼれる。



「何度も何度も電話もLINEもしたの……家にも行ったし……」



胸が苦しくなる。


連絡も取れずにずっと会えなくて、そのときの愛里の気持ちを考えたら、私までつらい。



「さんざん無視しといて、最後に好きな人ができたとか……ありえないよね?」



無理に笑おうとしてこっちを見た愛里は、それに失敗したことに気づいてまた顔を元に戻した。



「……ゆうくんが、どうしてそうなったのかは、私にはわからないけど……」



だけどこれだけは言える。



「愛里のせいでそうなったわけじゃないと思う」



「なんで……そんなこと、美羽にわかるのよ」



非難めいた口ぶりだけど、力のないセリフに愛里の悲しみが伝わってくる。



「わかんないけど、でも愛里のことはちゃんと好きだったんだと思う。高校生になって部活にも入って愛里は忙しかったし、家庭教師は辞めちゃったから会う時間も少なかったんでしょう?ゆうくんも、もしかしたら不安だったのかも」


< 235 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop