初恋マニュアル
「美羽……もし、好きな人がいるなら……後悔しないようにしてね?」
愛里が私の肩を抱いて、コツンと頭をそこに乗せてくる。
今までとはちがって、ひやかすようなものじゃなく、真剣な言葉だった。
「うん……実は、ね?」
「ん?」
「愛里に言わなくちゃいけないことがあって……ほんとはそれを……伝えにきたんだ」
「そっか」
余計なことは一切言わず、あいづちだけをうって、愛里は私の言葉を待っていた。
「あのね?私……ほんとはね?」
「うん」
「三浦くんのこと……好きみたいなんだ」
すぐ横にある愛里の顔は今、どんな表情をしてるんだろう?
見えなくてホッとしたような、逆にこわいような、不思議な気分。
突然、耳元でフッと笑い声がして、愛里が肩に乗せていた頭を起こして、私の顔をのぞきこむ。
それから「知ってた」と、得意気な顔でニヤッと笑った。