初恋マニュアル
それから自分のひざに顔をくっつけてボソッとつぶやいた。



「今回のことで、おあいこかな?」



「え?」



「あたしもゆうくんのこと言えなかったし。美羽にいじわるしちゃったし。それに……」



「それに?」



「仲直りのきっかけ作ってくれたのは美羽だしね?」



ひざにつけていた顔をクルッとこちらに向けて、てれくさそうに笑う愛里。


私はまた泣きそうになった。


やっぱり愛里が好きだ。


けんかなんかしたことなかったから不安で、きらいになりそうなときもあったけど、またこうして普通に話せることが、こんなにもうれしい。


仲直りできたことにホッとして、壁にかかっている白くて丸い時計をなにげなく見ると、もうすでに時刻は8時を回っていた。



「あ!私そろそろ帰らなきゃ」



あわてて腰をあげる。


こんなにおそくなると思ってなかったから、お母さんにもなにも言ってきてない。
< 242 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop