初恋マニュアル
「今日だけだからね?明日からはビシビシ勉強するよ?」
そんなきびしいことを言われても、目先のドーナツと愛里と一緒に帰れることがうれしくて全然聞いてなかった。
美味しいって評判の最近できたドーナツ屋さんは、実は一度来てみたかったお店。
本当は学校帰りの寄り道は禁止なんだけど、今日は特別。
だってめったにない愛里との2人の時間だもの。
衣替えのすんだ10月中旬なだけあって、お店にはブレザーやセーターなんかを羽織った女の子が多い。
「わぁ、混んでるね?」
「みんな試験前で帰りが早いんだろうね?」
それでも来るのが早かったのか、いくつか席は空いていた。
カバンと上着で席を取ってから、ドーナツを選びに列に並ぶ。
チョコのもいいなとか、クリームが入ってるのも美味しそうとか、あれこれ言いながら好きなドーナツを取っていく。
愛里はシンプルなプレーンのドーナツとチョコのドーナツ、それにカフェオレ。
私はカスタードクリームのドーナツに栗のドーナツ、それとココアをたのんだ。
ハロウィン限定のドーナツも魅力的だったけど、お財布と相談してがまんした。