初恋マニュアル



「ふっふっふ。それがねぇ、ちがうんだなぁ」



「え!いるの?」



おもわず乗り出して声をあげると、愛里はシーっと人差し指を口の前に持ってくる。


それから、私の方に顔を近づけると、実はね?と意味ありげに話しはじめた。



「こないだ、見ちゃったんだよねぇ」



「な、なにを?」



ゴクリとつばをのみ込みながら、そう聞き返す。


でも本当は聞きたくないような、複雑な気持ちだ。



「テニス部の先輩に告られてるのを」



「えぇーーーーっ!!」



つい大声でさけんでしまって、おもいきり口を愛里にふさがれた。



「美羽!声、大きい!」



「ご、ごめん……でも、だってぇ、先輩に?」



「そ、一つ上の阿部先輩」



愛里はともかく、夏帆ちゃんまで年上とかありえない。


私なんて、つい最近までクラスの男子とだってしゃべれなかったのに……
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