初恋マニュアル
顔に手を当てて、大げさに気の毒アピールをしてくる愛里になにも言えなくなる。



「だって……」



「でもあれでしょ?ちゃんと羽生とは友達してあげてるんでしょ?」



愛里はカフェオレを一口すすりながら目だけをこっちに向ける。



「う……ん」



友達してあげてるとか、そんな上から目線なものじゃない。


LINEも、ときには電話もしてきてくれる羽生くんは、いつも私を心配してくれてて。


愛里と仲直りしたことを一番よろこんでくれたのも、もしかしたら羽生くんかもしれない。



ーーいいひと、なんだよなぁ……



残っていた栗のドーナツを口に放り込むと、愛里はカフェオレを飲み干して腰を上げた。



「さ、そろそろ帰ろっか」



本当はもう少しおしゃべりしていきたかったけど、同じ家に帰るんだしと自分を納得させて、仕方なくうなずいて立ち上がった。


ドーナツ屋さんを出て、駅の方へと向かう。


あまり出かけない私は、その間にポツポツとあるいろんな店で足を止めては、愛里にしかられていた。


あともう少しで駅というところにあるコンビニを通りすぎようとしたとき、あれ?と声がしてすぐにもう1人の声が重なった。


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