初恋マニュアル



「ねぇ、あんた、孝弘の彼女だよな?」



ちょうどコンビニから出てきた制服を着た男子の二人連れ。


孝弘って名前に覚えがあったから、私は思わず振り返った。


一瞬、だれなのかわからなかったけど、すぐに夏祭りの悪夢を思い出す。


愛里も隣で私の様子に気付いたのか、同じように立ち止まって振り向いた。


だれ?みたいな顔で、私に目配せしてくるけど、すぐに言葉が出てこない。



「今日は孝弘、一緒じゃないの?」



前に見たときとちがって二人とも髪の色は黒くなっていて、ピアスもない。


甚平が制服に変わったのもあって、三浦くんの名前が出なかったらだれだかわからなかったかもしれないと思った。



「あ……はい」



バクバクする心臓の音を感じながら、返事をする。


あのとき、三浦くんとこの二人は三人でなにかを話していて、そのあとあきらめたように帰っていった。


もしかしたら、この人たちをあきらめさせるために、三浦くんの彼女ってことにしてくれたのかもしれない。
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