初恋マニュアル
「夏祭り……のとき」
「夏祭り?」
「うん……三浦くんと2人ではぐれたとき、ちょっと……からまれた」
「さっきみたいに?」
おどろいたのと心配してるのとが混ざったような顔で、愛里が私の顔をのぞきこむ。
「さっきより……強引だった……けど」
おそるおそるそう答えると、愛里は私のうでをつかんで、大丈夫だったの!?と心配そうに聞いてきた。
「あ……うん、三浦くんが助けてくれた……から」
はぁー……と、大きなため息をついて、愛里はほっとしたように肩を落とす。
「そっか、なら良かったけど……あ!それで孝弘の彼女?」
さっきのセリフを思い出したのか、愛里が顔をあげる。
「うん、そう。たぶん、そう言えば向こうが引くと思ったんだと思う」
「まあたしかにそれが一番手っ取り早いもんね」
納得したようにうなずいて、ようやく愛里は私の腕から手をはなした。
「さっきの……南高の制服だったよね?」
「え?そうなの?」
南高といえば、うちからそう遠くない場所にある公立高校だ。
わりと人気があって、偏差値も高めだって聞いたことがある。
「ゆうくんの友達がさ……あの学校だったのよ。写真で見たことがあってね ??たしか、グレーの学ランだった」