初恋マニュアル
「あ……あの……こ、これから、部活?」
おもいきってそう声をかけてみた。
私にしてみたらかなりの勇気だ。
三浦くんは黒板をすべてきれいに消し終えてから、手をパンパンとはたいてこちらを振り返った。
「うん、これから。ちょっと忘れ物して教室にもどってきたんだけど、だれかが必死に黒板消してんのが見えたから……ぷっ」
言い終わると同時に、私のその姿を思い出したのか、三浦くんは吹き出した。
「ちょっ、そんな笑わなくても……」
「あぁ、ごめんごめん」
そうあやまりながらも、まだ肩をゆらして笑ってる。
よっぽどツボだったらしい。
「もぉ……ひどいなぁ」
出した言葉とは逆に、私もつられて笑ってしまった。
さっきまでのきんちょうがウソみたいに、なごんでるような気がする。
おだやかな空気は男子と二人きりな感じがしなかった。
不思議と三浦くんは場の空気をやさしくしてくれる。
「今日は須藤は?一緒じゃないの?」