初恋マニュアル
だから、来るのはもうちょっとしてからかもしれない。


サーッと冷たい風が吹き抜けて、ブルッと体がふるえる。


衣替えのすんだ制服でも、そろそろ寒いかもしれない。


お母さん、セーターをちゃんと洗っといてくれたかな?そのうちまた愛里の家にも冬服を取りに行かなきゃ。


ボーッと関係ないことを考えてれば落ち着けた。


心臓の音もだいぶおさまってる。


最後にもう一度、大きく深呼吸をしたとき、体育館の入り口あたりから、足音が聞こえた。


とたんにおさまったはずの心臓がトクトクと速いリズムを打ち始める。


だれなのかわからないから、そっと足音の主を待っていると、見知った顔がひょいと顔を出した。



「三浦くん!」



ホッとしてそうさけぶと、三浦くんも私の姿を見つけてフッと顔をゆるませた。



「ごめん、遅くなって」



こっちに真っすぐ歩いてくる三浦くんは、制服ではなくジャージ姿で、部活にすぐ行けるように着替えてから来たんだとわかった。
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