初恋マニュアル
あのとき、体育館裏に来てくれた羽生くんに、なんで三浦くんじゃないんだろうなんて、失礼なことを思ったのを思い出した。



「それもそっか、あは……は」



私も一緒に笑ってごまかすと、三浦くんは仲直りできて良かったね?と今度はやさしく笑った。



「それで、話って?」



ゴクリとつばをのみ込んで、いよいよだと一度目を閉じて深呼吸をする。


今日、何回目の深呼吸だろうなんて思いながら、そっと息をはきだした。


手がふるえてくる。


右手を左手でつかんで、それをなんとかごまかした。


よし!と覚悟を決めて、すうっと息を吸いながら目を開ける。


三浦くんは真っすぐにこちらを見つめたまま、私が話しはじめるのをだまって待っていた。



「あの……私、三浦くんに言いたいことが……あって」



決意したはずなのに、昨日シミュレーションしたようにはスラスラと言葉が出てこない。



「私、三浦くんのことが……」



そう言おうとしたときだった。



「羽生のこと?」



――え?



目を見ることができなくて首あたりを見ながら話していた私は、急にさえぎられた三浦くんの言葉におどろいて、おもわず目を合わせた。
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