初恋マニュアル
フラれたらそうしようって決めたじゃない。


これからも友達としてよろしくって言うつもりだったのに……


目の前の三浦くんの顔がおどろいたような表情に変わって、申し訳なさそうに私の名前を呼んだ。



「丸山……」



いたわるような声。


だんだん近くなる三浦くんの顔。


大きな手が伸びてきて、そっと私の頬に触れた。



「ごめんね?」



だから……そんな風に触れるのは、三浦くんの悪いくせだよ?


かんちがいしちゃったじゃない。


もしかしたら、三浦くんも私を好きでいてくれてるんじゃないかって……


大きな手の親指が私の目元でやさしくスライドする。


ポロポロとこぼれ落ちる涙を、三浦くんはそっと指でぬぐってくれていた。


そっか、私……泣いてたんだ。


笑ってたつもりだったのに、泣いてたんだ。


昨日の夜、フラれたときのシミュレーションだってちゃんとしたのに……



ダメだった……ダメだったよ、愛里……



涙は止まるどころかあとからあとからこぼれ落ちる。


それが嗚咽に変わったとき、涙をぬぐってくれていた手が頬からはなれて、私の頭をそっと抱えるように自分の胸で受け止めてくれた。


それは抱きしめるのとはちがう、ただ胸を貸してくれるって言った方が正しいような、ざんこくな温もりだった。

< 275 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop