初恋マニュアル
「わかった……付き合うよ」
ひとりで行っても良かったんだけど、なんとなく不自然な気がした。
友達とふたりで入れば、あやしまれないような気がしたから。
「よし!じ ゃあ、ご飯食べよう?」
愛里が立ち上がりながら、私に手を差し伸べる。
「えぇー、食欲ないよ」
「ダーメ、ちゃんと食べなきゃ。ココ、育たないよ?」
愛里が指差したのは、私の胸。
「ひどーい!愛里のバカ!」
慌てて布団で胸をかくすけど、すぐに愛里にひっぱがされる。
「だから、気にしてんならちゃんとご飯食べなさい!」
「うぅ……」
仕方なく布団から手をはなして、愛里の手をつかんだ。
グイッと引っ張られて、ベッドから立ち上がる。
その瞬間、さっきから香ってくるカレーの匂いにつられたのか、お腹がグーッといきおいよくなった。
「あれぇ?食欲、なかったんじゃなかったっけ?」
愛理がにやりと笑いながら、私をふりかえる。
「カレーは反則だよぉ!」
言いながら、ほっぺたをふくらませてみせたけど、全然説得力がない。
こらえきれずにふたりで顔を見合わせると、同時にぷっとふきだした。
「ほら、行くよ?今日は美羽の好きなチキンカレーだって、おばさん言ってたから」
「うん!」
きっと、なにも聞かないけど、お母さんにも心配かけちゃってる。
せめて、カレーをおかわりしなくちゃな、なんて考えながら、愛里に手を引かれるままリビングへといそいだ。