初恋マニュアル
「俊弘は……」
俊弘っていうのはたぶん、三浦くんのお兄さんの名前。
こないだもその名前が出てきた。
「あ、ごめんなさい。お客さん来ちゃった。その話はまた今度ね?」
バイバイと手を振って、お姉さんは入ってきたばかりのお客さんに水を運びに行った。
なんかうまくはぐらかされた気がする。
「あーあ、結構上手い質問だったのになぁ」
愛里ががっかりした様子で口を尖らせた。
「なんか一瞬、困った顔……しなかった?」
「うん、私も思った」
私の意見に同調した愛里は、チーズケーキをパクっと一口食べる。
「うわっ、美味しい!」
ほっぺたに両手をやりながら、おおげさなくらいのジェスチャーをして興奮する愛里。
私も一口食べてみると、レモンの風味がしてさっぱりしていた。
なんだか手作りっぽい感じ。
「あの人が作ったのかな?」