初恋マニュアル
笑いながら話してるのに、なぜか重苦しい空気が流れる。


私たちは顔をひきつらせたままうまく笑うことが出来ずに、ただ早苗さんの話を聞いていた。



「学校からも呼び出しとか結構あって……お母さんは体が弱かったから、代わりに俊弘がよく出向いてた。俊弘のお父さんはもう亡くなってたから……自分が父親代わりみたいに思ってたのかもしれない。それくらい、優しい人だった」



怖かった。


自分が聞きたいって言ったくせに、真実を知るのが怖かった。


まさかこんなに複雑で重たい話だなんて思ってなかったから……



「高校生になれば少しは大人になってくれるかなって、私も俊弘も期待してた。でもそのあとずっといつもの仲間と夜遊びするようになって、春休みに入ってもそれは続いて……」



きっと仲間ってあの二人のことだ。


チラッと愛里の方を見ると、愛里も察しがついていたようにうなずいた。
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