初恋マニュアル
思いがけない彼の言葉に、つぶっていた目をそっと開けると、三浦くんがまたクスクス笑いながら、私の背中をパンパンとはたいていた。



「背中、チョークの粉で真っ白だよ?」



「うそっ!」



かんちがいしてたことと、チョークの粉で汚れた制服を見られたことで、顔が一気に熱くなる。


今、私の顔はきっと真っ赤だ。


両肩をもたれてくるりと背中を三浦くんの方に向かされると、今度は丁寧に背中と髪についたチョークの粉をはたいて落としてくれている。


彼の手が自分の背中や髪に触れる感触にどうしていいかわからないくらいドキドキした。



「はい、だいぶきれいになったけど、家帰ったらもう一度見てみて?」



されるがままになっていた体を、三浦くんの方に向ける。



「あ、ありがと……」



はずかしすぎるこの状況で、顔なんかまともに見れなかったけど、それでもなんとかお礼を言わなきゃと小さくしぼりだすようにそう言った。



「うん、それじゃ俺そろそろ部活行くね?日直がんばって」



にっこり笑って、じゃあね?と小さく手をふりながら三浦くんは教室を出て行った。
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