初恋マニュアル
あの日、私が泣きじゃくるのを、そっと見守ってくれた彼は、最後に言ってくれたんだ。



『俺は、丸山のこと……大事な友達だと思ってるから』



それは三浦くんなりの気づかい。


私が前みたいにかたくなな態度になるんじゃないかって、きっと心配してくれたからこその言葉。


俺をダシにしてくれていいよ?って言ってくれたあの日の約束を、守ろうとしてくれてるんだと思った。


部活に行かなきゃいけない三浦くんを困らせて、しばらく泣いていた私は、そんな彼の気持ちを無駄にしたくなくて…


頑張って頑張って、ありがとうって言った。


もう大丈夫って、三浦くんの胸を両手でそっと押し返して。


もう部活に行って?って笑おうとした私は、きっとものすごく不細工だったにちがいない。


切なそうな顔でもう一度ごめん……て言った三浦くんは、そのまま体育館の向こうへと消えていった。



「美羽ちゃん」



そう呼ばれてハッとした。

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