初恋マニュアル



――なんだったの?いったい……



いや、三浦くんはただ、私が届かないのを見かねて手伝ってくれただけだ。


私が一人でテンパってただけ。


きんちょうしていた体からへなへなと力が抜けていく。


でも日直が一緒の男子には声も出せなかったのに、不思議と三浦くんには自分から話すことができた。



――男の子をあんなに近くでみたの初めてかも……。



いまだなりやまない心臓の音。


シーンと静まり返る教室で、その音はやけに大きく聞こえた。


黒板を振り返ると、きれいに消されたあと。


黒板消しをそっと持ってみる。


三浦くんが触れたんだと思ったら、なんだかもっとドキドキした。



――やだ!なにやってんの?私……



自分の行動におどろいて、私はあわててさっき書いた日誌を取りに窓際の席にもどった。


戸締りをして職員室に日誌を返しに行けば、あとはもう帰るだけだ。


ひとつひとつ窓を閉めていく。最後の窓を閉めようとしたとき、校庭を走る陸上部の姿が見えた。
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