初恋マニュアル
パタンと日誌を閉じて立ち上がると、窓の鍵を確認して回る。


全部チェックを終えると、私は日誌と一緒に自分のカバンを持って、教室を出ようとした。


もちろんそのまま帰れるようにだ。


電気を消そうとしたとき、廊下のすぐそばにある階段を昇ってくる足音が聞こえて、思わず手を止める。


だれだろう?


まだ部活は終わってなさそうだし、先生かな?


不思議に思って階段の暗闇をじっと見つめていると、ひょっこり現れたのは――



「三浦くん!」



「……丸山?」



息を切らして階段を上がってきたのを見ると、もしかしたらまた忘れ物かもしれない。



「なんか、忘れ物?」



そう聞いたけど、三浦くんは首を振って息を整えてる。


呼吸が落ち着いた頃、彼は真っ直ぐ私のところまでやってきて、教室の前の方の扉から、中をフイッとのぞきこんだ。


目の前には三浦くんの胸があって、あの日この胸に顔を埋めたんだと思ったら恥ずかしくなる。
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