初恋マニュアル
思わず目をそらすと上から三浦くんの声がした。



「あれ?黒板……届いたの?」



「え?」



おどろいてそらしていた顔をまた三浦くんに向ける。


それって、もしかして……


彼もまたジャージ姿の体をこちらに向けて、黒板から私の顔に目線を移したから、バッチリ目が合ってしまった。


緊張する私とはちがって、三浦くんはいつもの優しくて余裕の笑みを浮かべる。



「今日、丸山が日直なの思い出して。須藤も部活みたいだったし、もしかしたらまた黒板消せなくてピョンピョンはねてるのかなって」



クスッと笑った三浦くんは、もしかしたらあの時のことを思い出してるのかもしれない。




「え……あの、心配……してくれたの?」



息を切らしてここまで走ってきてくれたのは、私のため?



「休憩中に思い出して、大丈夫かなって様子見に来ただけだよ」



廊下と教室の間に立っている私たちは、半分暗くて半分明るい。


少し教室よりの三浦くんの髪が、キラキラ光って綺麗だった。


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