初恋マニュアル
早苗さんの言葉が頭をよぎる。



『孝弘くんは、本当は美羽ちゃんのこと好きなんだと思う』



こんなことされると、そうなんじゃないかって、期待しちゃう自分がいた。


でも、早苗さんの言葉通りなら、彼はそれを認めない。


だとしたら、私に出来るのはしっかりした自分を見せること。


私に頑張れって背中を押してくれた三浦くんに、唯一出来る恩返し。



「あのね?」



「ん?」



「私、ちょっとづつだけど、頑張って前に進んでると思う」



私の言葉に少しおどろいたように目を開いた三浦くんは、そう……と一瞬寂しげな笑みを浮かべた。



「今日もね?もう一人の日直の男子に、黒板上の方だけでいいから消してって、言えたの」



ねぇ?三浦くん……


私、ちゃんと言えたよ?


三浦くん以外の男の子とちゃんと話せた。


羽生くんはまた別としても、それって私の中ではかなりの進歩だ。


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