初恋マニュアル
「そっか……」
そう相づちを打つ三浦くんの反応に、私は首を傾げた。
ほめてくれとは言わないけど、喜んではくれると思ってたから……
ふいに彼が動いて、教室の中へと入っていった。
黒板消しを持つと、雑に消されたそこを丁寧になぞっていく。
綺麗に消し終えると、パンパンと手をはたいて黒板を満足げにながめてから思い付いたように私の方を見た。
「そういえば、姉さんの店、行ってくれたんだってね?」
ありがとう、喜んでたよなんて笑顔で言われて、私は軽くパニックになる。
「え……あ、うん。愛里を一度連れていきたかったから……」
どこまで聞いてるんだろう?
全部……だとしたら、きっと軽蔑される。
三浦くんを詮索するような真似、したんだもん。
「また行ってあげてよ。俺のおすすめはチーズケーキかな?」
三浦くんのこの感じ。
早苗さんは私たちがお店に来たことしか言ってないのかもしれない。