初恋マニュアル
だとしたら、私も早苗さんの好意をむだには出来ないと思った。



「あ、それ食べたよ?すごく美味しかった」



ドキドキする気持ちを抑えて、努めて明るくそう言った。



「ほんと?そっか、食べてくれたんだ」



そう言って目を輝かせる三浦くんは、やっぱり自分のことみたいにうれしそうに笑う。



「また行きたいね?って、愛里とも話してたんだ」



本当はそうじゃない。


愛里はきっともう一緒には行ってくれないだろう。


あの日の夜。


私は愛里に泣かれた。


あんな風に言ってたけど、本当はあきらめるつもりなんかないんでしょ?って問い詰められて……



「美羽の馬鹿!」



そう最後に言って、愛里は泣きながら寝てしまった。


だけど次の日には普通に笑って、おはようって言ってくれて、私はホッとしたんだ。


でもそれきりもう、愛里は三浦くんのことにも早苗さんのことにも一切触れなくなった。
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